健康診断の紙が届いた週。あの週だけは、なぜかグラスに手を伸ばす前に一瞬止まるんですよ。
「ウイスキーは体に悪いのかな」と検索する気持ちも、たぶんあの一瞬と同じだと思います。やめたいわけじゃない。ただ、自分の飲み方がどのあたりにいるのかを知りたい。
先に答えを書いてしまいます。体に悪いかどうかを決めているのは、銘柄でも値段でもありません。1日に体へ入れる純アルコールの量です。
この記事は、その量を自分の手で出せるところまで持っていくのが目的です。計算式と線は厚生労働省が公表している資料から引き、杯ごとのグラム数はその式で私が計算しました。
- ウイスキーのダブル1杯(60mL・40度)に入る純アルコールは19.2g
- 厚労省が「生活習慣病のリスクを高める量」とする線は、1日あたり男性40g以上・女性20g以上
- 純アルコール20gちょうどは、40度なら62.5mL。ダブルとの差はたった2.5mL
- その線は「ここまでなら安全」という意味ではない(表1では高血圧などが「0g<」)
- 「安いウイスキーだから体に悪い」は成立しない。ただし価格は杯数に効く
- 2024年の厚労省ガイドラインに「週2日の休肝日」という記述は無い
結論|体に悪いかどうかを決めているのは、銘柄でも値段でもなく「1日に入れる純アルコールの量」
数字を3つ置きます。
1. 40度のウイスキーをダブル1杯(60mL)飲むと、純アルコールは19.2g
2. 厚生労働省が「生活習慣病のリスクを高める量」として示している線は、1日あたり男性40g以上・女性20g以上
3. 40度なら、純アルコール20gちょうどは62.5mL
ここで大事なのは3番目です。女性の線である20gに、40度のダブル1杯はほぼ届きます(19.2g÷20g=96%)。
「超える」わけではありません。0.8g足りない。
ただ、その0.8gを注ぐ量に直すと2.5mLです。グラスの中で2.5mLの差を見分けるのは、まず無理だと思います。
二択で答えるなら、「ウイスキーだから悪い」ではなく、「線を越えた量が悪い」です。厚労省のガイドラインは酒の種類ごとに線を引かず、純アルコールのグラム数だけで線を引いています。だからこの記事が答えるのは、その線がどこにあるか、そして自分の1杯は何グラムなのかの2つです。
なぜ「銘柄」でも「値段」でもないのか
1杯の中身は、注いだ量 × 度数だけで決まります。厚労省の計算式もそうなっています。
銘柄が変えるのは度数です。つまり同じ60mLの中に何グラム入るかを変える。だから度数が違えば1杯の中身は変わります。
でも、純アルコールのグラム数を同じに揃えてしまえば、銘柄の違いはこの数字の上には残りません。
値段も同じです。手に取りやすいボトルでも、特別な日に開けるボトルでも、40度なら60mLは19.2g。ここに差はつきません。
では価格は無関係かというと、それも違います。効く場所が別で、その話は後ろで書きます。
自分の1杯は何グラムか|シングル9.6g・ダブル19.2g、20gちょうどは62.5mL

ここからは、自分の1杯が何グラムなのかを、自分で出せるようにします。
よく見かける解説は、たいてい40度で固定して計算しています。でも家の棚にあるボトルが全部40度ということは、まずないですよね。
なので、度数を軸にした早見表を作りました。縦が度数、横が注いだ量です。右端は「純アルコール20gちょうどになる量」。
| アルコール度数 | シングル(30mL) | ダブル(60mL) | 純アルコール20gになる量 |
|---|---|---|---|
| 37度 | 8.88g | 17.76g | 約67.6mL |
| 40度 | 9.6g | 19.2g | 62.5mL |
| 43度 | 10.32g | 20.64g | 約58.1mL |
| 51度 | 12.24g | 24.48g | 約49.0mL |
計算式は厚労省が本文に書いている
この表は私が勝手に作った係数で計算したものではありません。式そのものが、厚労省のガイドライン本文に載っています。
お酒に含まれる純アルコール量は、「純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)」で表すことができ厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日)
最後の0.8はアルコールの比重です。水より少しだけ軽いので、mLをgに直すときに掛ける。それだけの数字です。
当てはめるとこうなります。
・シングル30mL × 0.40 × 0.8 = 9.6g
・ダブル60mL × 0.40 × 0.8 = 19.2g
ひとつ補足を。シングル30mL・ダブル60mLというのは日本のバーや家飲みでの慣用で、法令で決まった単位ではありません。お店によって1杯の量は違います。だからこそ、家では自分の1杯の量を知っておく意味があります。
実際に量ってみたら、20gは62.5mLだった|ダブルとの差は2.5mL
私は一度、純アルコール20gが実際にどれくらいの量なのかを量ってみたことがあります。40度のウイスキーなら62.5mLでした。
ダブル1杯が60mL。差は2.5mLです。小さじ半分くらい。
つまり、線を越えるかどうかは、注ぐ量が60mLか62.5mLかという2.5mLの差で決まっているということになります。
グラスに入った状態で、この2.5mLを目で見分けられる人はいないと思うんですよ。「ちょっと多めに」の一振りで、あっさり動く幅です。
だから私は量ります。注ぐ量を計れるジガーカップを使っていて、1杯に注ぐ量は飲み始める前に決めています。
難しいことは何もしていません。ただ「だいたいこのくらい」をやめただけです。
ついでに書いておくと、カロリーが気になる方はウイスキーのカロリーの記事のほうで別に計算しています。
量る道具がひとつあるだけで、毎回の「だいたい」がなくなりますよ。
ハイボールや水割りにしても、入る純アルコールの量は変わらない
ここは勘違いされやすいところです。
炭酸水で割っても、氷を足しても、グラスに注いだウイスキーのmLが同じなら、入る純アルコール量は同じです。
60mLのウイスキーをそのまま飲めば19.2g。炭酸水で薄めて300mLのハイボールにしても19.2g。
薄めて変わるのは濃度であって、総量ではないんですよ。
自分が今日入れた量を数えるときは、割ったかどうかではなくボトルから何mL出したかを見る。それだけのことです。
厚労省が引いている線は男性40g・女性20g|ただし「個々人の許容量ではない」と書いてある
自分の1杯のグラム数が出たら、次は比べる相手です。ウイスキーの適量を調べていると「20g」という数字によく当たると思います。
ところが、いま世の中に出回っている数字は1本ではありません。出所も単位の基準もバラバラなものが、同じ顔をして並んでいます。
整理するとこうなります。どれも「1日あたり」を指しているわけではない、というのが一番のポイントです。
| よく見る数字 | 出所 | 単位の基準 | 何を示したものか | 「個々人の許容量ではない」の注記 |
|---|---|---|---|---|
| 節度ある適度な飲酒=20g | 健康日本21(第一次・2000年) | 1日あたり | 「節度ある適度な飲酒」の量として示されたもの | 付いていない(2024年のガイドライン本文には登場しない) |
| 生活習慣病のリスクを高める量=男性40g・女性20g | アルコール健康障害対策推進基本計画(第2期)と健康日本21(第三次)/2024年ガイドラインに記載 | 1日あたり | その量を飲む人を減らす目標 | ★付いている |
| 疾病ごとの数値(表1) | 参考文献に基づく研究結果 | 1週間あたり(参考欄は1日) | 研究結果 | 付いていない |
| 一時多量飲酒=60g以上 | 2024年ガイドライン | 1回の飲酒機会あたり | 避けるべき飲み方 | 付いていない |
「20g」には出所が2つある|第一次の20gと、第三次の男性40g・女性20g
よく見かけるのが「健康日本21で示された適量は1日約20グラム」という書き方です。
これは間違いではないのですが、2000年に始まった第一次の数字です。そして2024年2月に公表された厚労省の飲酒ガイドラインが載せているのは、健康日本21(第三次)の「男性40g以上・女性20g以上」のほうです(アルコール健康障害対策推進基本計画の第2期にも同じ数字が入っています)。
つまり、男女共通の20gと、男性40g・女性20gは別の数字です。第何次のものかが書かれていないと、男性の読者が20gを自分の線だと思い、女性の読者が40gを自分の線だと思う、という取り違えが起きます。
もうひとつ。細かい話ですが、「適量」という言葉は、このガイドライン本文には1回も出てきません。厚労省が使っているのは、あくまで「生活習慣病のリスクを高める量」という言い方のほうです。
男性40gはウイスキー125mL|ダブル2杯ではまだ届かない
では40gをウイスキーに直すといくつか。40度なら125mLです(40 ÷ 0.40 ÷ 0.8)。ダブルにして約2.1杯。
ここ、「ダブル2杯でアウト」と書いてある解説をよく見かけますが、正確ではありません。ダブル2杯は38.4gで、線の96%。まだ届いていません。
自分の話を書いておくと、私が一晩に飲む量はウイスキーでシングル2〜3杯くらいです。上の式に当てはめると、2杯なら19.2g、3杯なら28.8g。男性の線40gには、3杯でも届いていません。
でもまったく同じ量を女性が飲んだ場合は、2杯(19.2g)で線の手前、3杯(28.8g)で女性の線20gを超えています。
ガイドラインは、女性は一般的に男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないことが知られている、と記載しています(p.2)。同じグラスを挟んでいても、線の位置が違う。ここは覚えておいて損がないと思います。
この数字は「集団への目標」であって、個人への許可証ではない
もうひとつ、この男性40g・女性20gには注記が付いています。逐語で引きます。
※これらの量の飲酒をしている者の減少を目標としたものです。なお、これらの量は個々人の許容量を示したものではありません。厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日)
この注記が直接付いているのは、男性40g・女性20gの行だけです。第一次の20gにも、この後で見る表1の数値にも、同じ注記は付いていません。
つまり、これは「その量を飲む人の割合を減らしましょう」という集団に対する目標であって、「あなたは40gまで飲んでいい」という個人への許可証ではない、ということです。
「ここまでなら安全」という意味ではない|表1では高血圧と男性の食道がんが「0g<」
線が引いてあると、どうしても「そこまではセーフ」と読みたくなります。私もそう読みました。
ただ、この線は「ここまでなら安全」という意味ではありません。
同じガイドラインの6ページ目に、疾病ごとの数値をまとめた表1が載っています。本文のほうにも、こう書かれています。
例えば、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまうこと厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日)
表1から、ウイスキーを飲む人に関係しそうな行を抜き出します。「0g<」というのは、少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられる、という意味です。
| 疾病 | 男性(研究結果) | 女性(研究結果) | (参考)1日あたり |
|---|---|---|---|
| 高血圧 | 0g< | 0g< | — |
| 食道がん | 0g< | データなし | — |
| 大腸がん | 150g/週 | 150g/週 | 20g/日 |
| 乳がん | データなし | 100g/週 | 14g/日 |
乳がんは女性100g/週|1日に直した参考値14gを、ダブル1杯19.2gは超える
先に、表の下に付いている注を引いておきます。
注:上記の飲酒量(純アルコール量)の数値のうち、「研究結果」の欄の数値については、参考文献に基づく研究結果によるもので、これ以上の飲酒をすると発症等のリスクが上がると考えられるもの。「参考」の欄にある数値については、研究結果の数値を元に、仮に7で除した場合の参考値(概数)。「0g<」は少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられるもの。(中略)なお、これらの飲酒量(純アルコール量)については、すべて日本人に対する研究に基づくものとなります。厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日)表1の注
ここは読み方を間違えやすいところです。表1は研究結果の紹介であって、厚労省が定めた基準値ではありません。1日あたりの数値も、週の数値を仮に7で割った概数だと原典自身が書いています。対象はすべて日本人の研究です。
そのうえで見てほしいのが乳がんの行です。女性は100g/週。これを7で割った参考値が1日14gで、毎日飲む場合の1日分にあたります。
40度のダブル1杯は19.2gですから、この参考値14gを1杯で超えています。週で数えると、毎日ダブル1杯なら19.2g×7=134.4gで、100g/週のほうも超えます。週に何日飲むかで、この合計は動きます。
女性の線は20gだけではない、ということです。ただし「飲めば必ず病気になる」という意味ではありません。原典が言っているのは、その量を超えるとリスクが上がると考えられる、という研究結果があるというところまでです。
度数は40度とは限らない|同じ「ダブル1杯」でも中身が変わる
ここまで40度で計算してきましたが、棚のボトルを何本か並べてみると、ウイスキーの度数は37度のものから50度を超えるものまで幅があります。私が長くハイボール用の定番にしていたフロム・ザ・バレルは、ニッカの公式サイトに「アルコール分51%」と載っています。
同じ「ダブル1杯」でも、中身はこれだけ動きます。
・37度なら60mLで17.76g
・40度なら19.2g
・43度なら20.64g
・51度なら24.48g
注目してほしいのは43度です。43度になると、ダブル1杯(20.64g)で女性の線20gを越えます。
40度なら96%で止まっていたものが、3度上がっただけで越える。杯数は1杯のまま、何も変えていないのにです。
51度なら1杯で24.48g。同じ「1杯」という言葉の中身が、まるで違うわけです。
だから自分の1杯を数えるときは、必ずボトルの度数とセットで見る。上の早見表に戻れば、だいたいの位置が出ると思います。
ちなみに度数の高いボトルは、1本の値段ではなく純アルコール1mLあたりで価格を比べた記事で別の角度から書いています。
「安いウイスキーは体に悪い」は成立するか|価格が体に効くのではなく、価格が杯数に効く
ここが、この記事のもうひとつの答えです。
「安いウイスキーは悪酔いする」「安い酒は体に残る」。この手の説明は、本当によく見かけます。
ただ、価格帯と体への影響を直接結びつけた記述は、今回引いた厚労省のガイドラインには出てきません。ガイドラインが最初から最後まで示しているのは、純アルコール量(g)という一本の物差しだけです。
度数が同じなら、安いボトルの60mLも高いボトルの60mLも19.2gです。ここまで書いてきたとおり、この数字は値札を見ません。
では価格は無関係なのか。私はそうは思っていません。価格は体に効くのではなく、杯数に効くんですよ。
私自身の実感として、安い銘柄のときは杯数が伸びやすい。「もう1杯くらい、いいか」のハードルが明らかに下がります。高いボトルだと、同じ手が途中で止まる。味の差ではなく、単純に注ぐ回数の差です。
そして純アルコール量は、杯数が増えればそのまま増えます。価格 → 杯数 → 純アルコール量 → 体。経路はここです。価格からいきなり体に線は引けません。
なので結論は「安いから体に悪い」でも「安くても安心」でもありません。安い銘柄のときこそ、量を先に決めて量る。ここが答えです。
なぜ安く作れるのかという中身の話は安い銘柄を1本だけ掘り下げた記事のほうに書いてあります。
高い銘柄も安い銘柄も、翌日を分けていたのは総量とペースだった
私はどちらも飲んできました。一番好きなのはイチローズモルトのMWRですし、毎日のハイボール用には長いことフロム・ザ・バレルが定番でした(最近は店頭であまり見かけないので、ネットで買っています)。
そのうえでの実感なんですが、翌日に響くかどうかを分けていたのは、銘柄ではなくその日の総量とペースでした。
ハイボールやビールで終わった日は、翌日まったく問題ない。逆に、甘くて飲みやすいお酒が入った日は、度数の割にあっさり効く感じがあります。たぶん、飲みやすいぶんペースが上がっているだけだと思うんですよ。
※ここは私個人の体感で、医学的な説明ではありません。
実際に飲んできた銘柄そのものの話は銘柄ごとの正直な感想をまとめた記事のほうにあります。
ストレートは体に悪いのか|薄めても、入る量そのものは変わらない
「ウイスキーのストレートは体に悪い」という検索も多いようです。ここも数字で整理できます。
結論から言うと、ストレートでもロックでもハイボールでも、グラスに注いだウイスキーのmLが同じなら、入る純アルコール量は同じです。
変わるのは濃度だけで、前半の早見表と同じ話です。
ではストレートに何もないのかというと、そこは1つあります。量が読みにくくなるという点です。
ストレートは1杯の液量が小さいので、同じ「1杯」でも飲み終わるのが早い。早く終われば、次の1杯までの間隔も短くなります。結果としてその日の総量が、自分の感覚より増えやすい。
ストレートが悪いのではなく、ストレートは量を数えにくい飲み方だ、というだけの話です。だから余計に、注いだmLを見ておく意味がある。
ガイドラインが挙げている配慮の中にも、こういう項目があります。
・③「飲酒前又は飲酒中に食事をとる」
・④「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲む」(項目の冒頭部分)
私も水を並べて飲むようにしています。これはストレートかどうかに関係なく、今夜からできることです。
なお、ストレートが飲みにくくて困っているという方はストレートがきついと感じる人向けの記事のほうへどうぞ。寝る前の1杯をどう考えるかは寝る前に飲むときの記事で別に書いています。
毎日飲んでいいのか|厚労省が書いているのは「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける」だけ
「週に2日は休肝日を」と書いてあるページと、「休肝日には意味がない」と書いてあるページ。検索すると両方出てきて、正直どっちだと思いますよね。
そこで、2024年2月に公表された厚労省の飲酒ガイドライン全17ページを、私のほうで通しで確認しました。
「休肝日」という言葉は1回も出てきません。「週2日」という数字も出てきません。
書かれているのは、健康に配慮した飲酒の仕方の5番目にあるこの項目と、その下に添えられた理由の2文だけです。
⑤ 一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日)p.4
毎日飲酒を続けた場合、アルコール依存症の発症につながる可能性があります。一週間の純アルコール摂取量を減らすために、定期的に飲酒をしないようにするなど配慮が必要です。同ガイドライン p.5(⑤に続く説明)
読み取れることを、2つとも書きます。片方だけだと嘘になるので。
1. 日数の指定は無い。「週2日」も「連続2日」も、この資料には書かれていません
2. それでも、飲まない日を設けること自体は書かれている。「定期的に」とまで書いてあり、理由として、毎日飲み続けた場合にアルコール依存症の発症につながる可能性が挙げられています
つまり「週2日という数字の出どころがここではない」だけであって、「飲まない日はいらない」という話ではありません。
では「週2日」はどこから来たのか。調べたら、出どころは2つありました。
ひとつは厚労省の保健指導用ツール「あなたの飲酒 解説書」。こちらには「週に少なくとも1日、できれば2日以上は飲酒をしない日をつくる」と書かれています。同じ厚労省でも、ガイドライン本体ではなく現場向けのツールのほうに数字があるわけです。
もうひとつは公益社団法人アルコール健康医学協会の「適正飲酒の10か条」で、第4条が「つくろうよ 週に二日は休肝日」。ただしこちらは国の基準ではありません。
ついでに言うと、「2日続けて休む」必要はどこにも書かれていません。むしろ「週に二日」を掲げている側が、「2日連続で休むのではなく、2〜3日飲んで1日休む」と明示しています。連続2日で休もうとして失敗した経験がある方は、そこは気にしなくていいと思いますよ。
なお「休肝日」という言葉自体、厚労省のe-ヘルスネットが「週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語」と説明しています。国が日数を決めた用語ではない、ということです。
整理すると、国が決めているのは日数ではなく量のほう。ここまで見てきた男性40g・女性20gが、その量です。
私は週5〜6日飲む。3日以上続いたら意識的に休む
自分のことも書いておきます。私は週に5〜6日飲みます。飲める日は飲んでしまうほうです。
そのうえで、3日以上続いたら意識的に1日空けるようにしています。曜日を決めているわけではありません。続いたな、と思ったところで止める、という感覚的なやり方です。
これを正解として出すつもりはありません。ガイドラインに日数が書かれていない以上、私のやり方も一つの決め方にすぎないからです。
ただ、何も決めていないと「気づいたら2週間続いていた」ということが普通に起きます。数字を決めるより先に、自分が何日続いているかを把握しておく。順番としては、そこが先だと思っています。
1回で60g以上は、1日の線とは別の話|病院のベッドで目が覚めた日
ここまでの40g・20gは、すべて1日あたりの数字でした。
ガイドラインにはもう1つ、単位の基準がまったく違う線が出てきます。
① 一時多量飲酒(特に短時間の多量飲酒)/様々な身体疾患の発症や、急性アルコール中毒を引き起こす可能性があります。一時多量飲酒(1 回の飲酒機会で純アルコール摂取量 60g以上)は、外傷の危険性も高めるものであり、避けるべきです。厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日)
こちらは「1日あたり」ではなく「1回の飲酒機会あたり」です。同じgでも、数える箱が違います。
40度のウイスキーに直すと187.5mL、ダブルにして約3.1杯。これは私のほうで換算した数字です。
ここから先は、数字ではなく私の話を書かせてください。
私は一度、急性アルコール中毒で運ばれたことがあります。
特定の酒が原因ではありませんでした。いろいろな酒をちゃんぽんしてしまったのと、その日、体調が少し悪かったこと。それが重なった日でした。
倒れる瞬間の記憶がありません。気づいたら病院のベッドの上でした。
それまで、酒で記憶を無くしたことも、酔い潰れたこともなかったんですよ。自分は強いほうだと思っていました。
あの日、自分が何g入れていたのかは分かりません。60gを越えていたのかどうかも分かりません。原因は量だけではなく、ちゃんぽんと体調が重なったことだと思っています。
ガイドラインも冒頭で、「アルコールによる影響には個人差があり、また、その時の体調等によっても影響が変わり得るものです」と書いています。
残ったのは「いろんな要因が重なると、急に限界が来る」という実感でした。それ以降、飲み方をちゃんと考えるようになりました。
※これは私個人の経験です。医学的な説明ではありませんし、こうすれば必ずこうなるという話でもありません。
言いたいのは1つだけです。1日の線を守っているかどうかと、1回の飲み方が危ないかどうかは、別の物差しだということ。1日の合計が40g以内でも、それを1回で一気に入れる日は、別の話になります。
同じように純アルコール量で測り直した記事が別のお酒についてもう1本あります。
じゃあ今夜からどうするか|量る・先に決める・水を挟む

今夜のグラスから変えられることを3つだけ書きます。
どれもガイドラインの「健康に配慮した飲酒の仕方」に挙がっている範囲のことです。
1. 量る
ジガーカップでもキッチンスケールでも、家にあるものでかまいません。62.5mLと60mLの差は、量らなければ分かりません。1回量ってみると、自分がいつも何mL注いでいたかが分かります。だいたい、思っている量とはずれています。
2. 先に決める
ガイドラインには「あらかじめ量を決めて飲酒をする」という項目があります。私も、注ぐ量のほうは飲み始める前に決めています。飲み始めてから決めようとすると、まず決まりません。
3. 水を挟む
「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲む」で始まる項目も、同じ配慮事項に並んでいます。私は水を箱で常備していて、切らして「まあいいか」となる日をなくすようにしています。ついでに「飲酒前又は飲酒中に食事をとる」も同じ並びにあります。
この3つをやれば安全になる、という話ではありません。体調が悪い日、薬を飲んだ日は、量の話より先に「今日は飲まない」を選んでください。ガイドラインも「病気等療養中の飲酒や服薬後の飲酒」を、避けるべき飲酒として挙げています。
ただ、自分が今日いくつ入れたかを言える状態になるだけで、判断できることはかなり増えると思います。
減らしたい・不安があるときの相談先
量を減らしたいのに減らない、飲む量が気になって仕方がない。そういうときに、一人で抱えなくていい窓口があります。
各都道府県・政令指定都市に精神保健福祉センターが置かれていて、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。厚生労働省のサイトに全国の一覧があります。
「やめたいのにやめられない」という気持ちのほうについては晩酌がやめられないと感じたときの記事でも書いています。
- 全国の精神保健福祉センター一覧(厚生労働省)… https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html
- 本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています
ウイスキーと体への影響でよくある質問
検索でよく一緒に出てくる疑問を8つ。答えの軸は最後まで同じで、見るのは銘柄ではなく量です。
Q. ウイスキーは1日何杯までですか?
40度のダブルで数えると、女性は1杯(19.2g)で線20gの手前、男性は2杯(38.4g)で線40gの手前、3杯目の途中(125mL)で越えます。厚労省が示しているのはこのグラムの線で、「何杯まで」という杯数は出していません。線には「個々人の許容量を示したものではない」という注記が付いています。
Q. ウイスキーをストレートで飲むのは体に悪いですか?
注いだmLが同じなら、ストレートでも割っても入る純アルコール量は変わりません。ストレート固有のリスクを示した記述は、今回引いたガイドラインにはありませんでした。
Q. ウイスキーのロックは体に悪いですか?
ロック特有のリスクという記述も、今回引いたガイドラインにはありませんでした。氷が溶ければ濃度は下がりますが、グラスに注いだウイスキーのmLが同じなら純アルコール量は同じです。
Q. 安いウイスキーは悪酔いしやすいですか?
価格で決まるという根拠は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。ただ私自身は、安い銘柄のときのほうが杯数が伸びやすいという実感があります。悪酔いを分けているのは値札ではなく、その日の総量とペースのほうだと思っています。
Q. ハイボールにすれば体への負担は減りますか?
濃度は下がりますが、ボトルから出したmLが同じなら、入る純アルコールの量は変わりません。ガイドラインの配慮事項には、例として「水などを混ぜてアルコール度数を低くして飲酒をする」が挙がっています。数えるときは割った後の量ではなく、ボトルから出したmLを見てください。
Q. 毎日ウイスキーを飲んでも大丈夫ですか?
2024年の厚労省ガイドラインに「週2日」という記述はありません。書かれているのは「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」という項目と、その理由(毎日飲酒を続けた場合、アルコール依存症の発症につながる可能性)で、日数の指定はない、というのが正確なところです。
Q. 女性の適量は男性と違いますか?
違います。生活習慣病のリスクを高める量として示されているのは、男性40g以上・女性20g以上。ガイドラインは、女性は男性と比べて体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないことが知られている、と記載しています。40度のダブル1杯19.2gは、女性の線にほぼ届く量です。
Q. 他のお酒と比べてウイスキーはどうですか?
厚労省のガイドラインは、酒の種類ごとに線を引いていません。示しているのは純アルコール量(g)の線だけなので、比べるならまずgに揃えるのが先です。種類ごとの話はこちらの記事に書いています。→ お酒の種類で比べたい人はこちら
まとめ|決めているのは銘柄でも値段でもなく、今日入れた量
最後にもう一度だけ、答えを置きます。
ウイスキーが体に悪いかどうかを決めているのは、銘柄でも値段でもなく、1日に体へ入れる純アルコールの量です。
・40度のダブル1杯(60mL)は19.2g
・厚労省が示す線は、1日あたり男性40g以上・女性20g以上
・純アルコール20gちょうどは62.5mL。ダブルとの差は2.5mL
この2.5mLは、目分量では絶対に分かりません。だから量る。今夜からできるのは、たぶんそれだけです。
ちなみに私は、健康診断の紙が届いた週だけは、いまでもそこで手が止まります。止まったときに「じゃあ今日は何mLにしようか」と考えられるようになったのは、量りはじめてからでした。


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