「上善如水はまずい」。そう検索して、ここにたどり着いた方が多いと思うんですよ。
飲んでみたら水みたいだった。日本酒に詳しい人から「あれは水みたいなものだ」と言われた——そういう話も珍しくありません。
私も上善如水を飲みました。白いボトルの定番、純米吟醸のほうです。正直に言うと、水っぽいと感じました。好きな大辛口と比べると、やや物足りない。
でも、先に答えを書いておきます。あの薄いと感じる軽さは、失敗でも手抜きでもありません。白瀧酒造が、狙ってそう造っています。
なぜそう言い切れるのか。蔵が自分で「水のような日本酒」を理想だと書いているからです。この記事は、上善如水がまずいと言われる理由を、公式の数字と言葉だけで確かめた記録です。
- 上善如水 純米吟醸が水っぽいのは失敗ではなく、白瀧酒造が向かっている方向だということ
- 蔵は2021年3月に「軟水の柔らかさをそのままお酒でも表現するため」精米歩合を60%から55%へ変更している
- アルコール分は14度以上15度未満。度数が低いから薄い、という説明は当てはまらない
- 日本酒度はプラス4で、公式自身が「やや辛口」と表記していること
- 上のランク(純米大吟醸)に行けば濃くなる、とは公式は書いていないこと。日本酒度はプラス2で純米吟醸より甘口側、公式の味わい表記は「上品」「深み」で、「濃厚」「コク」の語はない
- 水っぽいと感じた私が、最近その良さがわかってきた理由
上善如水がまずいと言われるのはなぜか|水っぽいのは失敗ではなく設計どおり
結論から書きます。上善如水がまずい・水っぽいと言われるのは、この酒が失敗作だからではありません。白瀧酒造が、最初からその方向を狙って造っているからです。
口コミでは「薄い」「水みたい」という言葉で語られることの多いお酒です。
私が否定したいのは、その感想のほうではありません。その手前にある「本当はもっと濃いはずなのに、出来が悪いからこうなった」という前提のほうなんですよ。
なぜそう言えるのか。根拠は2つ。蔵自身の言葉と、2021年に蔵が実際にやったことです。
蔵が目指しているのは「水のような酒」そのもの
まず、白瀧酒造の上善如水ブランドページを開いてみてください。いちばん上に、こう書いてあります。
雪どけの水は、やわらかい。わたしたちが理想とするのは、「みずのごとし」の名の通り、まさに「水」のような日本酒です。(白瀧酒造 上善如水ブランドページ・2026年9月19日時点)
まさに「水」のような日本酒。同じページの純米吟醸の紹介文には、こうあります。
きっかけは「上善如水」。みずのごとしの名前の通り、あらゆるものと調和して、するりと喉の奥へと落ちる。目指したのはシンプルで清らかなお酒です。(同)
「するりと喉の奥へと落ちる」「シンプルで清らか」。これは第三者のレビューではなく、蔵自身が掲げている理想です。
飲んだ人が「水みたいだ」と言い、造っている蔵が「水のような日本酒」を理想だと言う。この2つは、同じ方向を指しているんですよ。
評価が割れているのではなく、感想と設計図がたまたま同じことを言っている。まずはここを押さえてください。
2021年、蔵は精米歩合を60%から55%へ変更した
もうひとつが、2021年3月8日に白瀧酒造が出したプレスリリースです。上善如水 純米吟醸を12年ぶりにリニューアルしたときのもので、こう書かれています。
軟水の柔らかさをそのままお酒でも表現するため、原料のお米を60%精米から55%精米へ変更しました(白瀧酒造株式会社 プレスリリース・2021年3月8日)
精米歩合でいえば60%から55%へ。米をより多く削る側へ、蔵が自分から動かしたということです。それも12年ぶりの大きな変更として、です。
ここは慎重に書きます。蔵が言っているのは「軟水の柔らかさの表現」であって、「水っぽくするため」ではありません。その2つを同じ言葉として扱うのは、私の読み替えになってしまう。
言えるのはここまでです。読者が水っぽいと感じているものと、蔵が柔らかさと呼んでいるものは、同じ方向を指している。少なくとも蔵は、この変更を「柔らかさのため」と説明しています。濃くするための変更ではなかった、ということです。
だから「濃い日本酒」を期待すると必ず外す
ここまでを、買う側の話に落とします。
濃い日本酒、旨味の強い日本酒を期待して上善如水を選ぶと、ほぼ確実に外します。運が悪かったのでも、ハズレの瓶を引いたのでもありません。
なぜ外すのかは、もう分かるはずです。期待していた日本酒の像と、この酒の精米歩合や造りが、最初から別の場所を向いているからなんですよ。新潟の淡麗な酒として語られることの多い銘柄でもあります。
まずいと感じた人が悪いのでもなければ、蔵が手を抜いたのでもない。目指している場所が、もともと違う。
では、その設計は何でできているのか。精米歩合55%という数字、日本酒度プラス4という数字、そして新潟の水。ここから先は、公式の数字を1つずつ開いていきます。

上善如水 純米吟醸の公式スペック|「薄い」と感じる酒の中身を数字で見る
ここからは証明です。まずいと言われる酒の中身を、数字で開いていきます。
白瀧酒造の公式商品ページに載っている上善如水 純米吟醸のスペックを、2021年のリニューアル前と、国税庁が定める純米吟醸酒の法令要件の2つと並べてみました。
数字はすべて2026年9月19日時点の公式表記です。通販サイトの商品説明にはリニューアル前の古い数字が残っていることがあるので、そちらと違っていたら公式のほうを見てください。リニューアル前の欄は、プレスリリースで公表されているのが精米歩合だけなので、それ以外は「確認できず」と書いてあります。分からないものを空欄にして、分かったように見せるのはやめておきます。
| 項目 | 上善如水 純米吟醸(現行) | 2021年リニューアル前 | 純米吟醸酒の法令要件(国税庁) |
|---|---|---|---|
| 特定名称 | 純米吟醸酒 | 確認できず(商品名は同じ「上善如水 純米吟醸」) | 純米吟醸酒 |
| 精米歩合 | 55% | 60% | 60%以下 |
| 日本酒度 | プラス4(やや辛口) | 確認できず | 規定なし |
| アルコール分 | 14度以上15度未満 | 確認できず | 規定なし |
| 原材料名 | 米(国産)、米麹(国産米) | 確認できず | 米、米こうじ |
| 味わい・香り(公式表記) | 味わい すっきり/香り 華やか | 確認できず | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 |
| おすすめの飲み方 | 冷やして | 確認できず | 規定なし |
| おすすめの料理 | 生牡蠣のレモン添え、春雨サラダ | 確認できず | 規定なし |
精米歩合55%|法令の上限より、さらに5ポイント削ってある
見てほしいのは精米歩合の行です。
純米吟醸酒を名乗るための上限は60%。上善如水はそこからさらに5ポイント削って、55%にしてあります。
そして2021年までは、上限ちょうどの60%でした。法令のラインぎりぎりに立っていた酒が、自分からその内側へ入っていったということです。
ただし、この5ポイントが薄さの原因だ、という話ではありません。削ると何が減るのかは、あとの章で国税庁の資料にあたります。
日本酒度の行にあるプラス4については、辛口か甘口かの話としてあとで詳しく見ます。
アルコール分は14度以上15度未満|度数はごく普通の日本酒
薄いと感じたとき、まず疑われるのがアルコール度数です。でも、ここは先に潰しておきます。
上善如水 純米吟醸のアルコール分は、公式表記で14度以上15度未満。一般的な日本酒と同じ帯で、低アルコールを売りにした酒ではありません。
つまり「度数が低いから薄い」という説明は、この酒には当てはまらないんですよ。軽さの原因は、アルコールの量ではなく味の設計の側にあります。
同じ「物足りない」でも、アルコールが少ない酒と、造りが軽い酒は別の話です。ここを混ぜると、原因を取り違えます。
原材料は米と米麹だけ|アルコールを足して造る酒ではない
「薄いのは、何か混ぜてあるからでは」と疑う人もいるかもしれません。次に原材料名。公式表記はこうです。
原材料名 米 (国産)、米麹 (国産米)(白瀧酒造「上善如水 純米吟醸」商品ページ・2026年9月19日時点)
米と米麹の2つだけ。純米吟醸酒なので、醸造アルコールは法令上そもそも入れられません。アルコールを足して造る酒ではない、ということです。
これを「だから上質だ」「だから体にいい」という話にするつもりはありません。原材料表示から言えるのは、米と米麹だけでこの軽さになっている、というところまでです。
公式が自分で「すっきり」と書いている
味の説明も、蔵が自分で書いています。
味わい すっきり / 香り 華やか / おすすめの飲み方 冷やして(白瀧酒造「上善如水 純米吟醸」商品ページ・2026年9月19日時点)
すっきり。濃厚でもコクがあるでもなく、すっきりです。2021年のプレスリリースには、もう少し具体的な表現もあります。
白桃やメロンを思わせる吟醸香が優しく香り、口に含むとお米の甘みをほんのり感じます。のどの奥にするりと流れるみずみずしいテクスチャーの後には心地よい余韻が続きます。(白瀧酒造株式会社 プレスリリース・2021年3月8日)
これは蔵の表現であって、私が飲んで感じたことではありません。念のため書いておきます。
それにしても、「みずみずしいテクスチャー」を狙い文句にしている酒に濃さを求めるのは、そもそも噛み合っていないんですよ。

精米歩合55%とは何か|国税庁の定義で「削る」の意味を確かめる

精米歩合55%。上善如水 純米吟醸の公式ページに出てくる数字ですが、これが何を意味しているのかを、国税庁の資料で確かめておきます。なぜ削るのか、削ると何が減るのか。
ここは、この記事でいちばん誤解されやすいところです。「削るほど水っぽくなる」という説明を見かけますが、それは正確ではありません。
55%は「玄米の45%を削っている」という意味
国税庁の「酒のしおり」には、こう書かれています。
精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいいます。精米歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取ることをいいます。(国税庁「酒のしおり」18 清酒の製法品質表示基準)
同じ当てはめをすると、精米歩合55%=玄米の表層部を45%削り取っていることになります(100−55=45。ここは当ブログの算出値です)。
どれくらい削っているのか。同じ資料に、比べるための数字があります。
一般家庭で食べている米は、精米歩合92%程度の白米(玄米の表層部を8%程度削り取ります。)ですが、清酒の原料とする米は、精米歩合75%以下の白米が多く用いられています。(同)
ご飯用が92%、清酒の原料は75%以下が多い、そして上善如水 純米吟醸は55%。かなり削ってある部類に入ります。
ひとつ注意。この45%は重量の割合であって、「味の45%を捨てた」という意味ではありません。
削って減るのは「雑味のもと」|削るほど水っぽくなる、ではない
では、削ると何が減るのか。国税庁の説明はこうです。
米の胚芽や表層部には、たんぱく質、脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分は、清酒の製造に必要な成分ですが、多過ぎると清酒の香りや味を悪くしますので、米を清酒の原料として使うときは、精米によってこれらの成分を少なくした白米を使います。(国税庁「酒のしおり」18)
読み返してみてください。書いてあるのは「多過ぎると香りや味を悪くする」ということです。
削って減るのは雑味のもとであって、削るほど水っぽくなる、とは書かれていません。
「よく削ってあるから薄いんだ」という説明を見かけますが、その根拠として持ち出される公的な資料は、そこまで言っていないんですよ。国税庁は「55%だから水っぽい」とも「55%だから美味しい」とも言っていません。言っているのは、表層部の成分が多すぎると香味を悪くするので精米する、という製造上の理由までです。
そして、この記事の後半にはその説明と噛み合わない例が出てきます。上善如水の純米大吟醸は精米歩合45%で、純米吟醸よりさらに削ってある。もし削るほど水っぽくなるなら、そちらはもっと水っぽいはずです。
では何が水っぽさを作っているのか|精米歩合だけでは決まらない
では、あの軽さは何が作っているのか。
水っぽさは精米歩合だけでは決まりません。仕込み水の性質、造り方、日本酒度——複数の設計要素の組み合わせで決まります。精米歩合は、そのうちの1つです。
ただ、分からないで終わらせるつもりはありません。蔵が55%への変更理由として挙げたのは「軟水の柔らかさをそのままお酒でも表現するため」でした。
つまり精米歩合は、水の性質を酒で表現するための手段の1つとして語られている。だとすれば、次に見るべきものははっきりしています。日本酒度と、新潟の水です。

上善如水は辛口か甘口か|公式表記は日本酒度プラス4「やや辛口」
「上善如水は辛口なのか、甘口なのか」。これもよく調べられている問いです。公式の答えは、はっきり出ています。
公式は「プラス4(やや辛口)」と書いている
白瀧酒造の上善如水 純米吟醸の商品ページには、こう書かれています。
日本酒度 プラス4 (やや辛口)(白瀧酒造「上善如水 純米吟醸」商品ページ・2026年9月19日時点)
日本酒度プラス4。そして「やや辛口」という評価語まで、蔵が自分で書いています。
大事なのは「やや」のほうです。蔵は「辛口」と言い切っていません。
甘口だと思って買った人も、辛口だと思って買った人も、どちらも公式の表記からは少しずれた期待を持って栓を開けていることになります。
日本酒度は「辛さ」ではなく比重の目安
そもそも日本酒度とは何を測った数字なのか。日本酒造組合中央会の用語集には、こうあります。
清酒の比重を示すのに便宜なように工夫された、清酒独特の単位であって、15℃の清酒に日本酒度浮ひょうを浮かべて測定する。15℃で4℃の純粋の水と同じ重さのものの日本酒度は0であり、それよりも軽いものは正の値、重いものは負の値をとる。(日本酒造組合中央会「日本酒用語集」・日本酒度の項)
つまり日本酒度は、用語集自身が書いているとおり比重の指標です。水と同じ重さなら0、糖分が少なくて水より軽ければプラスに振れる。「辛さ」そのものを直接測っている数字ではありません。
糖分が少ないとプラス側に振れるので、甘辛の目安として使われている——正確にはここまでです。
だから「プラス4だから辛口だ」と言い切るのは、少し急ぎすぎなんですよ。飲んだときの甘辛の体感は、日本酒度以外の要素でも動きます。公式が「やや辛口」と幅を持たせているのは、たぶんそういうことだと思います。
「薄い」と「甘い」は同時に起きうる|辛口を期待した人が外す理由
上善如水の口コミを眺めていると、面白いことに気づきます。「薄い」という声と「甘い」という声が、同じ酒に対して同居しているんですよ。
矛盾しているようですが、日本酒度の性格を知っていれば不思議ではありません。日本酒度は比重を見る指標であって、甘辛の体感をそのまま表す数字ではないからです。だからここでも、上善如水は実は甘口だ、という言い方はしません。
そして、辛口を探して上善如水にたどり着いた人が外す理由も、ここではっきりします。日本酒度プラス6以上の大辛口を基準にしている人にとって、プラス4はその手前にある帯です。
私がまさに、そのくちでした。この話は後半で詳しく書きます。
新潟の軟水が淡麗を作る|白瀧酒造は越後湯沢の蔵
設計の3つ目は水です。上善如水を造る白瀧酒造があるのは、新潟県南魚沼郡湯沢町(会社概要の所在地)。蔵自身がブランドページで「ここ越後湯沢は、日本有数の雪国」と書いている、雪深い土地です。
新潟の酒はよく淡麗と表現されます。ではなぜ淡麗になるのか。新潟県酒造組合が、水の性質で説明しています。
栄養源の少ない水は、発酵がおだやかになる
硬度の成分は、醸造過程で酵母の栄養源になります。栄養源の少ない水は、酵母での醗酵がおだやかでキメ細かいタイプのお酒になります。新潟のお酒が淡麗辛口といわれるわけはこの水のおかげです。(新潟県酒造組合「新潟の酒と仕込み水の関係」)
硬度が低い水=酵母の栄養源が少ない水では、発酵がおだやかになる。これが、新潟の酒が淡麗といわれる理由だと組合は説明しています。上善如水も、その土地で造られている1本です。
ここは帰属をはっきりさせておきます。これは新潟県酒造組合という業界団体の説明であって、国の資料でも査読を経た研究でもありません。
ひとつ添えておくと、新潟の酒がすべて淡麗というわけでもありません。県内には、しっかり濃い酒もあります。
蔵が「軟水の柔らかさを表現する」と言った意味
ここで、記事の最初に引いた蔵の言葉に戻ります。
「軟水の柔らかさをそのままお酒でも表現するため」——白瀧酒造が精米歩合を55%に変えた理由でした。
その「軟水」が何なのかも、蔵は自分で書いています。
冬のあいだに降り積もった雪は、やがて美しい雪どけ水となってわたしたちの日本酒の仕込み水となります。雪どけの水は、かろやかで、やわらかく、ほんのりと甘い。(白瀧酒造 上善如水ブランドページ・2026年9月19日時点)
かろやかで、やわらかい仕込み水を、酒の側で写し取ろうとした。上善如水の軽さは、削った結果というより、水の柔らかさを再現しようとした結果に近い。
ただ、線は守ります。蔵は「だから水っぽい」とは一言も書いていません。そう読み替えているのは、私です。
もうひとつ、確認できなかったことも書いておきます。白瀧酒造の仕込み水そのものの硬度は、公式で見つけられませんでした。「雪どけ水」という説明はありますが、数値はありません。組合の説明も新潟県全体の話であって、この蔵の水の実測値ではありません。
純米吟醸と純米大吟醸はどう違うか|上のランクに行けば濃くなる、とは公式は書いていない
「上善如水のランクは?」「最上級はどれ?」もよく調べられています。定番の上をいけば、もっと濃い酒になるのではないか——そう考えるのは自然です。
実際、「上善如水はまずい」という評判の多くは、定番である純米吟醸のほうに向けられたものです。
先に結論を書きます。公式の数字と言葉を見るかぎり、上のランクは「濃い日本酒」の代わりにはなりません。変わるのは濃さというより方向で、日本酒度はむしろ甘口側、公式の言葉は「上品」と「深み」です。
白瀧酒造の商品ページから、2製品のスペックを並べました。最後の1行だけは、私が実際に飲んで思ったことです。
| 項目 | 上善如水 純米吟醸 | 上善如水 純米大吟醸 |
|---|---|---|
| 特定名称 | 純米吟醸酒 | 純米大吟醸酒 |
| 精米歩合 | 55% | 45% |
| 日本酒度 | プラス4(やや辛口) | プラス2(中口) |
| アルコール分 | 14度以上15度未満 | 15度以上16度未満 |
| 味わい(公式表記) | すっきり | 上品 |
| 香り(公式表記) | 華やか | 華やか |
| おすすめの飲み方 | 冷やして | 冷やして |
| おすすめの料理 | 生牡蠣のレモン添え、春雨サラダ | アボカドと海老のサラダ、ちらし寿司 |
| 法令上の精米歩合要件 | 60%以下 | 50%以下 |
| 私が感じたこと | 水っぽい。やや物足りない。最近良さがわかってきた | こっちは全然違う。美味しい |
純米大吟醸は精米歩合45%・日本酒度プラス2|辛口側にも「濃厚」側にも振れていない
※スペックは白瀧酒造の公式商品ページ(2026年9月19日時点)、法令要件は国税庁「酒のしおり」より。
表を上から見ていきます。
精米歩合は、純米吟醸の55%に対して純米大吟醸は45%。上のランクのほうが、より多く削ってあります。純米大吟醸酒を名乗るには50%以下という要件があるので、当然といえば当然です。ただし前の章で見たとおり、精米歩合は濃さを測る数字ではありません。削ってあるから薄い、とはここでも言いません。
次に日本酒度。純米吟醸のプラス4に対して純米大吟醸はプラス2。公式表記も「やや辛口」に対して「中口」で、上のランクのほうが、辛口からはむしろ遠ざかっています。辛口を探して上のランクへ行くと、方向が逆です。ただし、甘口側に寄ったことを「だから濃くならない」の根拠にはしません。日本酒度は比重の目安であって、濃さを測る数字でもないからです。
濃さの手がかりは、公式の言葉のほうです。アルコール分は15度以上16度未満で、こちらは1度ぶん高い。味わい表記は「上品」。ブランドページのコピーには「気品のあふれる香りと、口の中でゆっくり広がる深みのある味わい」とあります。「深み」とは書いてある。ただしそれは「気品」「上品」と並んで使われている言葉で、「濃厚」「コク」「旨味が強い」「飲みごたえ」は、公式のどこにも出てきません。
濃い日本酒を求めて上のランクを買う根拠は、公式の数字にも言葉にもない。これは「純米大吟醸のほうが劣る」という話ではありません。向いている方向が違う、というだけです。
私は純米大吟醸も飲んでいる|「こっちは全然違う」と思った
ここから先は、私の話です。
私は上善如水の純米大吟醸も飲んでいます。そのとき口から出たのは、「こっちは全然違う」でした。
美味しいと思いました。定番の純米吟醸を水っぽいと感じた私が、同じブランドの上のランクでは、はっきり美味しいと思っている。
ひとつ、条件の違いも書いておきます。純米吟醸は冷やして、食事と一緒に。純米大吟醸は贈り物やお店といった、特別な場面で。蔵自身がブランドページで純米大吟醸を「贈り物にも最適」と位置づけていますが、私が飲んだのもそちら側の場面でした。同じ条件で並べて比べた話ではない、ということです。
なぜ違うと感じたのかは、書けません。香りや余韻を後から作文しても、それは飲んだときに確かめたことではないからです。確認できているのは「飲んだ」「全然違った」「美味しかった」の3つまでです。
※あくまで個人の感想です。
「削るほど水っぽい」わけではない|同じブランドで評価が割れる理由
さて、ここで精米歩合の話とつながります。
より多く削ってある純米大吟醸のほうを、私は美味しいと思った。
もし「精米歩合を削るほど水っぽくなる」なら、45%の純米大吟醸は55%の純米吟醸よりもっと水っぽいはずです。でも、そうはなりませんでした。
飲んだ場面が同じではないので、厳密な反証とは呼びません。それでも、より削ってあるほうを美味しいと思った以上、「削るほど水っぽくなる」という説明は、私の実感とは合わない。
言えるのは、精米歩合、日本酒度、水、造りという複数の設計要素の組み合わせが製品ごとに違い、その結果として同じブランドの中でも印象が割れる、というところまで。どれがどれだけ効いているのかは、公式も書いていませんし、私にも測れません。

私も水っぽいと感じた|大辛口を基準にしていた自分の側の話
ここまで公式の数字ばかり並べてきたので、私自身の話を書きます。上善如水 純米吟醸を飲んで何を感じたのか、なぜそう感じたのか、そのあと何が変わったのかです。
水っぽいと感じたのは、間違いではなかった
飲んだとき、私が思ったのは「水っぽいな」でした。
飲み方は、公式がすすめているのと同じです。冷やして、食事と一緒に。飲み方を間違えていたわけではなく、それでも水っぽいと感じました。これは今でも変わりません。上善如水 純米吟醸は、私にとって水っぽいお酒です。
ただ、この記事のために公式の資料を1つずつ開いていって、その感じ方は間違いではなかったと分かりました。
蔵は「水のような日本酒」を理想に掲げていて、2021年には軟水の柔らかさを表現するために精米歩合まで変えている。私が水っぽいと感じたものは、蔵が柔らかさと呼んで、意図して強めた方向でした。
感じ方がずれていたのではなく、そう造られていた。この順番で理解できたのが、私には大きかったんですよ。
好きな大辛口と比べると、やや物足りなかった
もうひとつ、正直に書きます。好きな大辛口と比べると、やや物足りない。
「やや」です。飲めたものじゃない、という話ではまったくありません。そして物足りなさの原因は、私の基準の側にあります。
私は日本酒度プラス6以上の大辛口が好きで、ご飯と一緒に飲むときはたいてい辛口を選びます。プラス6以上の大辛口は、甘口とはまったく別の酒に感じられる——それくらい振り切ったものを物差しにしている。
その物差しを当てれば、日本酒度プラス4の上善如水が手前に見えるのは当たり前です。当ブログでは超辛口の日本酒(春鹿 純米超辛口)のレビューも書いていますが、あの手の酒と同じ物差しで測ったら、たいていの日本酒は薄いほうへ倒れます。
物足りないと感じたのは、この酒の欠点ではなく、私が持ち込んだ基準の話なんですよ。
最近、良さがわかってきた|変わったのは酒ではなく私のほうだった
そして、ここが今回いちばん書きたかったところです。
最近になって、上善如水の良さがわかってきました。
酒が変わったわけではありません。変わったのは、私のほうです。
理由を正直に書くと、お酒に慣れてきたこと、それと歳を重ねて嗜好が変わってきたこと。そのあたりが重なって、以前は物足りなく、手前に見えていた軽さが、ちょうどよく感じられるようになってきました。
当ブログにはビールがまずいと感じる理由を書いた記事もありますが、あちらで書いた変化は、自分でも説明のつかないものでした。上善如水は違います。上善如水がまずいと言われる理由は酒の設計で、私の評価が変わった理由は慣れと嗜好の変化で、どちらも説明がつく。だからこの記事は、「人による」で終わらずに書けました。
上善如水がまずいと感じたら|冷やして、料理と一緒に、酒単体で味わおうとしない

ここからは処方です。手元に上善如水があって、飲んでみて「まずい」と思った人が、どの条件で飲み直してから判断するといいのか。公式が示している範囲で書きます。
先に断っておくと、「こうすれば美味しくなる」とは書きません。前の章に書いたとおり、この条件で飲んでも水っぽいと感じることはあります。この酒を判定する土俵はここだ、という話です。
※お酒は適量を守って、体調と相談しながら楽しんでください。
公式が挙げている飲み方は「冷やして」
白瀧酒造の商品ページにある、おすすめの飲み方の欄。書かれているのは、この一語だけです。
おすすめの飲み方 冷やして(白瀧酒造「上善如水 純米吟醸」商品ページ・2026年9月19日時点)
公式が挙げているのは「冷やして」です。ほかの飲み方については、この欄に記載がありません。燗がいい・悪いという話も、商品ページの範囲では書かれていません。
確かなのは、蔵がすすめているのが冷やして飲む形だ、というところまでです。
冷やして飲むお酒なので、開けたあとの置き場所も冷蔵庫になります。保存や賞味期限については日本酒の保存方法の記事に書きました。
器のほうも、冷やして飲む酒とは相性があります。小さめの冷酒グラスは、1回に注ぐ量が少ないぶん、温度が上がりきる前に飲み切れるんですよ。
公式のおすすめは生牡蠣のレモン添えと春雨サラダ|どちらも軽い料理
同じ表の、もう1行下。
おすすめの料理 生牡蠣のレモン添え、春雨サラダ(白瀧酒造「上善如水 純米吟醸」商品ページ・2026年9月19日時点)
生牡蠣のレモン添えと、春雨サラダ。2品とも、味の重い料理ではありません。蔵が想定しているのは、軽い料理と一緒に飲む場面だということです。
煮込みや脂の強い料理に合わせて「この酒は負けている」と感じたのなら、合わせる相手のほうを変えたほうが早い。この酒は、料理を押しのけて前に出るようには造られていません。
酒単体でじっくり味わおうとすると外す|料理と一緒に飲む前提で選ぶ
上善如水をまずいと感じた人の中には、酒だけで向き合っていた人もいると思います。
グラス1杯をじっくり味わって「この酒は何を言っているのか」と探す飲み方——これをやると外しやすい。主役を張るタイプではないからです。合わなければ、別の酒を選べばいいだけです。
期待の置きどころを変えるという話であって、我慢して飲めという意味ではありません。
公式が示しているのは、冷やして、軽い料理と一緒に。上善如水 純米吟醸は、その前提で選ぶお酒です。

上善如水を買って外す人・合う人|濃い日本酒を期待すると物足りない
ここまでの話を、上善如水を買う前のチェックリストにしておきます。好みの良し悪しではなく、設計との相性の話です。
「設計だから欠陥ではない」で終わらせるつもりはありません。そう言われても、読む側の「自分には水っぽかった」という事実は消えないからです。だったら、誰が外して誰が合うのかまで書いておいたほうがいい。
外すのはこういう人|濃い酒・旨味の強い酒を探している人
次のどれかに当てはまる人は、上善如水 純米吟醸を選ぶと物足りないと感じる可能性が高いです。
- 濃い日本酒、旨味の強い日本酒を探している人
- 日本酒度プラス6以上の大辛口を基準にしている人
- 料理を合わせず、酒だけをじっくり味わいたい人
- 飲みごたえで満足したい人
これは「この酒が悪い」という意味ではありません。探しているものと、造られているものが違うというだけです。
そしてまずいと言われる声の多くは、この行き違いから出ていると私は見ています。淡麗な酒に濃さを求めても、もともと入っていないものは出てきません。
合うのはこういう人|食事と一緒に、軽く冷やして飲みたい人
逆に、こういう人には合います。
- 食事と一緒に飲む酒(食中酒)を探している人
- 日本酒をあまり飲まず、重たいものが苦手な人
- 冷やして、軽く飲みたい人
- 料理の味を邪魔しない酒がほしい人
薄いと感じるか、軽やかと感じるか。同じ酒が「まずい」にも「ちょうどいい」にもなるのは、合わせる場面と、飲む側の基準の差です。
淡麗な酒は、料理の邪魔をしないことが仕事です。主役を張らないことが弱点ではなく役割になる場面が、家の食卓にはけっこうあるんですよ。冷蔵庫で冷やしておいて、その日のおかずの横に置く。そういう使い方をするお酒です。
日本酒でもう少し違うタイプを試したい方には、蓬莱泉「空」のレビューも書いています。
同じ上善如水の中で別の顔を見たいなら、純米大吟醸という選択肢もあります。公式スペックは精米歩合45%、日本酒度プラス2(中口)、アルコール分15度以上16度未満、味わいの表記は「上品」。純米吟醸とは、数字がひととおり違います。
上善如水についてよくある質問
最後に、上善如水についてよく調べられている質問をまとめておきます。答えはすべて、ここまでに書いた内容と同じです。
Q. 上善如水はどんな味ですか?
白瀧酒造の公式表記は「味わい すっきり」「香り 華やか」、日本酒度はプラス4で「やや辛口」です(上善如水 純米吟醸・2026年9月19日時点)。2021年のプレスリリースでは「白桃やメロンを思わせる吟醸香」「のどの奥にするりと流れるみずみずしいテクスチャー」とも書かれています。いずれも蔵自身の表現です。
Q. 上善如水はなぜまずいと言われるのですか?
濃い日本酒を期待して飲むと、この酒の設計と噛み合わないからです。白瀧酒造は2021年3月に「軟水の柔らかさをそのままお酒でも表現するため」精米歩合を60%から55%へ変更しており、水のような軽さは蔵が自分で強めた方向です。まずいというより、期待していた日本酒の像とずれている、というのが実際のところだと思います。
Q. 上善如水のランクは?最上級はどれですか?
公式ブランドページに載っている定番は、純米吟醸・純米大吟醸・スパークリング・純米吟醸 生酒の4つです(季節限定や別シリーズは別ページにあるので、これで全部という意味ではありません)。このうち、公式ブランドページが「上善如水の最高峰」と書いているのは純米大吟醸です(2026年9月19日時点)。精米歩合は45%で、定番の純米吟醸(55%)よりさらに削ってあります。
Q. 「上善如水」はどういう意味ですか?
白瀧酒造の公式ブランドページには「わたしたちが理想とするのは、「みずのごとし」の名の通り、まさに「水」のような日本酒です」とあります(2026年9月19日時点)。水のようであることを、名前のとおりの姿として掲げている、ということです。名前の出典(由来)についての公式の説明は、このページの範囲では見つけられませんでした。
Q. 上善如水はソーダ割りにできますか?
公式が挙げている飲み方は「冷やして」で、ソーダ割りについての記載は確認できませんでした。できる・できないを当ブログで断定はしません。蔵がすすめているのは冷やして飲む形です、というのが公式の答えになります。
Q. 上善如水はコンビニで買えますか?
どのコンビニチェーンで扱っているかまでは確認できていないので、買えると断定はできません。ただ、公式のラインナップには180ml(ボトル缶)という小さいサイズがあります。
まとめ|上善如水はまずいのではなく、水のように造ってある
上善如水がまずいと言われる理由と、私自身の評価がどう動いたかは、ここまでに書きました。まとめでは記事の答えだけを3つに絞ります。
- 白瀧酒造は2021年3月、上善如水 純米吟醸の精米歩合を60%から55%へ変更した。理由は「軟水の柔らかさをそのままお酒でも表現するため」。ブランドページでは「まさに「水」のような日本酒」を理想に掲げています。水のような軽さは、蔵が自分で強めた方向です
- アルコール分は14度以上15度未満。ごく普通の日本酒で、度数のせいで軽いわけではありません
- 上のランクに行けば濃くなる、とは公式は書いていない。純米大吟醸は日本酒度プラス2で純米吟醸より甘口側、公式の味わい表記は「上品」「深み」で、「濃厚」「コク」の語はありません。精米歩合は45%とさらに削ってありますが、精米歩合は濃さの指標ではありません
だから、濃い日本酒を探しているなら、この酒ではありません。そこは正直に書いておきます。逆にこの酒を判定するなら、冷やして、軽い料理と一緒に。公式が示している場面が、いちばん噛み合います。
上善如水はまずいのではなく、水のように造ってある。名前のとおりのお酒だった、というのが今回の答えです。


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