コンパスボックス スパイスツリーというウイスキーをご存知でしょうか。
いやぁ、これがまた只者じゃないんですよ。
「業界団体に販売を禁じられたウイスキー」なんて聞いたら、気になりますよね。
正直に言うと、僕も最初はその物語に惹かれて手に取ったクチです。
そんなスパイスツリーが、ついに終売になりました。
もう新しく造られることはありません。
だからこそ、このレビューを書き残しておきたいと思ったんです。
先に結論を言わせてください。
スパイスの嵐と蜜の甘さが同居する、唯一無二のブレンデッドモルトでした。
この記事でわかること
- スパイスツリーの味わい・香りの特徴
- SWAに禁じられた「スパイスツリー事件」の真相
- 家飲みで一番美味しい飲み方&相性のいいおつまみ
- 終売後の入手方法と後継ボトル情報
コンパスボックス スパイスツリーとは?基本情報
コンパスボックス スパイスツリーは、ロンドンに拠点を置く独立系ブレンダー「コンパスボックス」が手がけるブレンデッドモルト・スコッチウイスキーです。
このブランドを創ったのが、ジョン・グレイザーという人物。
もともとはディアジオでジョニーウォーカーのグローバル・マーケティングディレクターをしていた方なんですが、2000年に独立してコンパスボックスを設立しました。
グレイザーさんの哲学は「ウイスキーはアートだ」。
既存の枠にとらわれず、自分が美味しいと思うブレンドを追求する姿勢は、まさに職人というよりアーティストですよね。
スコットランドの蒸留所ではなく、ロンドンからウイスキーの常識を覆し続けている。
そんな反骨精神の結晶が、このスパイスツリーなんです。
アルコール度数は46%。
無着色でノンチルフィルタード(冷却濾過をしていない)という、ウイスキー本来の味わいを大切にした造りになっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | Compass Box The Spice Tree(ザ・スパイスツリー) |
| 種類 | ブレンデッドモルト・スコッチウイスキー |
| アルコール度数 | 46% |
| 容量 | 700ml |
| 参考価格 | 6,000〜9,000円(税込・終売品のため変動あり) |
| ブレンダー | コンパスボックス(ジョン・グレイザー) |
| 産地 | スコットランド |
| 着色・冷却濾過 | 無着色・ノンチルフィルタード |
SWAに禁じられた伝説──スパイスツリー事件の真相

スパイスツリーの話をするなら、避けて通れないのがSWA(スコッチウイスキー協会)との衝突事件です。
日本語で詳しく書かれた記事はほとんどないので、ここでしっかりお伝えしますね。
この事件を知ると、一杯のウイスキーの味わいがちょっと変わってくるかもしれません。
2005年:革新的なインナースティーブ製法
2005年、グレイザーさんは画期的なアイデアを実行に移しました。
「インナースティーブ」という製法です。
これは、熟成樽の内部にフレンチオークの板を焦がして挿入するというもの。
板の表面を焦がすことで、スパイシーなフレーバーを原酒にまとわせる狙いがありました。
ワイン業界では珍しくない手法なんですが、保守的なスコッチウイスキー業界では前代未聞。
まさに常識破りのチャレンジだったんです。
2006年:SWAの販売中止命令
案の定、SWA(スコッチウイスキー協会)が黙っていませんでした。
「樽の中に原酒以外のものを入れるのは、スコッチウイスキーの伝統的製法に反する」──2006年、SWAはスパイスツリーの販売中止を命じます。
グレイザーさんにとっては相当悔しかったと思いますよ。
自分が最高だと思う味を追求した結果が「禁止」ですからね。
ちなみに、この販売中止になった初版は「Banned Edition(禁じられた版)」としてコレクターズアイテムになり、今では高値で取引されています。
皮肉な話ですよね。
2009年:ハイブリッド樽で復活
でも、グレイザーさんは諦めなかった。
樽の「中に板を入れる」のがダメなら、樽そのものにフレンチオークを使えばいい。
そう考えて開発したのが「ハイブリッド樽」です。
樽の胴体はアメリカンオーク、鏡板(ヘッド)にフランス・ヴォージュ産のフレンチオーク新樽をヘビートーストで使用。
これならSWAの規制にも抵触しません。
2009年、スパイスツリーは見事に復活しました。
規制を逆手に取って、むしろ技術を進化させたわけです。
さらに2015年には、使用蒸留所名や原酒比率を全て公開。
すると翌2016年、SWAから「年数表記がEU法に抵触する」として開示を控えるよう求められます。
しかしグレイザーさんは消費者の知る権利を訴え、「スコッチウイスキー透明性キャンペーン」を正式に立ち上げました。
本当に筋の通った人だと思います。
キーモルトの個性──クライヌリッシュを軸としたブレンドの妙
コンパスボックスが公開している情報によると、スパイスツリーのブレンド構成は時期によって異なります。
透明性を掲げるブランドだからこそ分かる、ありがたい情報ですね。
ブレンデッドモルトというのは、複数の蒸留所のモルトウイスキーを混ぜ合わせたもの。
シングルモルトとは違って、ブレンダーの腕が味の決め手になるんです。
初期レシピ:クライヌリッシュ(約60%)を軸としたブレンド
2021年3月頃までのスパイスツリーの骨格を担っていたのが、ハイランドの名蒸留所クライヌリッシュです。
ブレンドの約60%を占め、残りをスペイサイドのダルユーイン(約20%)とハイランドのティーニニック(約20%)が構成していました。
クライヌリッシュの特徴は「ワクシー」と呼ばれる蜜蝋のような甘み。
ヘザーハニー(ヒースの花の蜂蜜)を思わせるコクのある甘さが、スパイスツリーの土台を形成していました。
ダルユーインはモルティでフルーティな味わい、ティーニニックはドライでアーシー(土っぽい)な風味を加え、甘いだけじゃない奥行きと複雑さを生み出していたんですね。
後期レシピ:グレンマレイを軸に変化
2021年3月以降のバッチでは、ブレンド構成が変更されています。
グレンマレイ(約60%)を中心に、トマーティン(約25%)、バルメナック(約15%)という組み合わせに切り替わりました。
ブレンデッドモルトはバッチごとにレシピを変えられるのが強み。
味わいの方向性──スパイスと蜜の骨格──は維持しつつ、原酒の調達状況に応じて最適なブレンドを追求するのがコンパスボックス流です。
どちらのバッチも、フレンチオーク・ハイブリッド樽による追加熟成でスパイシーなキャラクターが付与されている点は共通しています。
スパイスツリーを実際に飲んでみた【テイスティングレビュー】

さて、ここからはお待ちかねのテイスティングレビューです。
コンパスボックス スパイスツリーを実際にストレートで飲んだ感想を、正直にお伝えしますね。
※個人の感想です。
味覚には個人差がありますので、参考程度にどうぞ。
香り:ベーキングスパイスの万華鏡
グラスに注いだ瞬間、部屋にスパイスの香りがふわっと広がります。
まず最初に感じるのが、クローブとジンジャー。
その奥からシナモンとナツメグが追いかけてくる。
まるでベーキングスパイス(お菓子作りに使うスパイス)を詰め込んだ万華鏡のようです。
しばらくグラスを回していると、バニラの甘いアロマとドライフルーツのニュアンスも顔を出してきます。
46%でノンチルフィルタードだからこその、厚みのある香りですね。
グラスを嗅いでるだけで幸せになれます。
味わい:蜜とスパイスの共演
口に含むと、まずフルボディで丸みのある口当たりに驚きます。
46%の度数を感じさせない、なめらかさがあるんですよ。
最初に広がるのはバニラとバナナクリームのような甘み。
これがハニーの甘さと混ざり合って、贅沢な味わいを作っています。
中盤から舌先をピリピリと刺激するスパイスが存在感を増してきます。
ジンジャーとシナモンのエスニックな風味。
これがフレンチオーク樽の効果なんですね。
甘いだけじゃない、蜜とスパイスの共演。
「スパイスツリー」の名前は伊達じゃありません。
余韻:ペッパリーなスパイスが長く続く
飲み込んだ後の余韻は、ミディアムからロング。
けっこう長く楽しめます。
ナッツとビスケットのモルティな甘さが残りつつ、最後までペッパリー(胡椒っぽい)なスパイスが口の中に居座ります。
この余韻がまたクセになるんですよね。
一口飲んでは余韻を楽しみ、また一口。
気づけばグラスが空になっている、そんなウイスキーです。
スパイスツリーのおすすめの飲み方ベスト3
スパイスツリーをいろいろな飲み方で試してみました。
家飲みで楽しむなら、この3つがおすすめです。
第1位:ストレート──スパイスと甘みの完全なバランス
スパイスツリーの真価を味わうなら、やっぱりストレートが一番です。
46%・ノンチルフィルタードの厚みがダイレクトに伝わってきます。
ペッパリーなスパイスからキャラメル、ジンジャー、オートミールへと、時間とともに味わいが変化していくのが楽しいんですよ。
ちなみに、数滴だけ加水するとハニーの甘みが前面に出てきて、また違った表情を見せてくれます。
ストレートで飲み始めて、途中で加水する。
この変化を楽しむのが僕のお気に入りです。
第2位:ハイボール──食中酒として優秀な一杯
意外かもしれませんが、ハイボールも相当美味しいです。
炭酸で割ると、ビターとアシッド(酸味)が際立って爽快な飲み口に変わります。
チョコレートのような余韻も特徴的で、食事にとてもよく合うんですよ。
和食、洋食を問わず、晩酌の食中酒としてかなり優秀。
ハイボールの基本的な作り方については、ハイボールとは?美味しい作り方もご紹介の記事もぜひ参考にしてみてください。
第3位:ロック──ココアのフレーバーが際立つ
氷を入れてロックにすると、ココアのフレーバーが前面に出てきます。
ストレートとはまた違った顔を見せてくれるんですね。
クリーミーなバニラの甘みも楽しめて、ゆっくりした晩酌タイムにぴったり。
ちょっとマニアックなアレンジですが、クライヌリッシュのシングルモルトをフロート(上に浮かべる)させると、キーモルトの甘みが際立って面白いですよ。
スパイスツリーに合うおつまみ・ペアリング

スパイスツリーに合うおつまみを、家飲みで手軽に用意できるものからご紹介します。
スパイシーな味わいのウイスキーなので、ペアリングも楽しいんですよ。
スパイス系のおつまみがまず鉄板。
ブラックペッパーをたっぷりまぶしたチーズや、ビーフジャーキーとの相性は抜群です。
スパイス同士が響き合って、お互いの味わいを引き立ててくれます。
甘み系なら、ドライフルーツやダークチョコレートがおすすめ。
スパイスツリーのハニーの甘みと絶妙にマッチします。
コンビニで買うなら、明治のチョコレート効果(72%以上)が手軽で合わせやすいですよ。
食事と合わせるなら、スパイシーなカレーやグリルチキンが面白い組み合わせです。
晩ごはんのおかずにもう一品足して、スパイスツリーのハイボールで流し込む。
これ、最高の晩酌です。
コスパの良いウイスキーでデイリーな晩酌を楽しみたい方は、安くて美味しいウイスキーおすすめの記事もチェックしてみてください。
酒おやじの総合評価
スパイスツリーの総合評価をまとめました。
正直な採点です。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 香り | ★★★★☆(4.5) |
| 味わい | ★★★★☆(4.5) |
| コスパ | ★★★☆☆(3.5) |
| 初心者向け度 | ★★★☆☆(3.5) |
| 総合 | ★★★★☆(4.0) |
晩酌のレギュラー入り確定です。
スパイスと蜜の共演は他のウイスキーではなかなか味わえない個性。
終売で値上がり傾向なのでコスパは厳しめ評価ですが、味わいの満足度は文句なしですよ。
シェリー樽由来のリッチな味わいが好きな方には、グレンドロナック12年を正直レビューもおすすめです。
スパイスツリーとはまた違った方向の「濃い旨さ」が楽しめますよ。
こんな人におすすめ / おすすめしない人
- スパイシーで複雑なウイスキーが好きな人
- 業界の常識に挑戦するブランドストーリーに惹かれる人
- 終売前に伝説のボトルを手に入れたい人
- ブレンデッドモルトの奥深さを体験したい人
- 甘くてライトなウイスキーが好みの人
- スモーキー・ピーティーなフレーバーを求めている人
- コスパ重視で選びたい人(終売で値上がり傾向)
終売情報と後継品──ネクタロシティ&クリムゾンカスク
コンパスボックス スパイスツリーは、2024年に生産終了が発表されました。
同時にザ・ストーリー・オブ・ザ・スパニアードも終売となっています。
在庫限りで販売終了です。
長年愛されてきた銘柄だけに残念ですが、コンパスボックスは新たな後継品を送り出しています。
スパイスツリーの終売は「終わり」ではなく、ブランドの進化と捉えるべきかもしれませんね。
スパイスツリーの後継ボトル2種
後継品として登場したのが「クリムゾンカスク」と「ネクタロシティ」の2本です。
クリムゾンカスク(参考価格:約10,300〜12,300円)は、スパイスツリーとスパニアードの要素を統合した後継ボトルです。
アメリカンオークのオロロソシェリーバットで熟成した、チョコレートやプラムジャムを思わせるリッチでスパイシーな味わい。
スパイスツリーのスパイス感を別の角度から継承しています。
ブレンデッドモルト・スコッチウイスキーで、46%・無着色・ノンチルフィルタードです。
ネクタロシティ(参考価格:約8,800〜10,800円)は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした「ブレンデッドスコッチウイスキー」。
金柑のような柑橘のニュアンスに、はちみつ、シナモン、レーズンの味わいが続く、甘い方向のフレーバーが特徴です。
こちらも46%・無着色・ノンチルフィルタード。
どちらもスパイスツリーとは異なるキャラクターですが、コンパスボックスの「美味しいウイスキーを追求する」姿勢は健在。
ピートモンスターやオーチャードハウスといった継続ラインナップも含めて、引き続き注目のブランドです。
まだ買える?スパイスツリーの入手方法
2026年2月現在、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの通販サイトで在庫があれば購入可能です。
ただし、在庫は確実に減少しています。
相場は6,000円〜9,000円程度ですが、終売品のため今後さらに値上がりする可能性が高いです。
気になっている方は、早めにチェックすることをおすすめします。
※お酒は20歳になってから。
未成年者の飲酒は法律で禁じられています。
まとめ:スパイスツリーは今のうちに飲んでおきたい一本
SWAに「禁じられた」という反骨のストーリーを背負い、ハイブリッド樽という技術革新で復活を遂げたコンパスボックス スパイスツリー。
その唯一無二のスパイシーな味わいは、終売になった今でも色褪せません。
スパイスと蜜が織りなす共演は、一度飲めば忘れられない体験になるはずです。
在庫があるうちに、ぜひ一本手に取ってみてください。
スパイスツリーを気に入った方は、グレンドロナック12年を正直レビューや、ハイボールとは?美味しい作り方もご紹介の記事もあわせてどうぞ。
一緒に晩酌を楽しみましょう。


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